むかちん歴史日記253 ドラムロールが鳴り響く、女性ノーベル賞受賞者たち③ 戦後ドイツを代表する女性詩人~ネリー・ザックス
新宿から歴史を発信!!!むかちんです(≧▽≦)
今日はドラムロールが鳴り響く、女性ノーベル賞受賞者たちの第三弾!!
戦後ドイツを代表する女性詩人
ネリー・ザックス(1891-1970)
を紹介します(*^▽^*)
◆ザックスは1891年にベルリンのシェーネベルクのユダヤ系の家系に生まれます。
両親はゴムなどを扱う工場を経営しており、ザックス自身は病弱であったため、
自宅で教育を受けていました。
15歳のときにセルマ・ラーゲルレーヴの小説を読んで感銘を受け、
自身も将来は作家になることを望み始めます。
1921年、最初の詩集「伝説集」を刊行。
1929年には初めて詩を新聞に発表します。
その翌年、父が亡くなりますが
このころからドイツではナチスが台頭し、ユダヤ人の迫害が始まります。
1940年に老齢の母親を連れて、ナチスの迫害から逃れるためにスウェーデンへ亡命、スウェーデン王室に嘆願したそうです。
50歳を過ぎてからスウェーデン語を学ぶこととなり、
スウェーデン語の詩をドイツ語に翻訳する仕事を始めます。
ザックスは戦後もそのままスウェーデンにとどまり、翻訳活動とドイツ語での詩の創作をつづけました。
彼女は1950年に母親を亡くしたことへのショックと、ナチスの迫害という経験から精神的に何度もやみつつ、詩を創作し続けます。
彼女の詩はそうした経験が色濃く投影されていました。
そして、彼女は戦後を代表する詩人となっていきました。
ナチスによる迫害経験から生み出される詩の数々は、ユダヤ人の嘆きを代弁しているとも称され、1966年には、「ノーベル文学賞」を受賞しました。
以下はザックスの代表的な詩集「死の棲家で」のなかで無題の詩「老人たちの」です。
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もう死を吹きかける
老人たちのひきとる息までも
おまえたちは奪い去った
この大地を押しのける安堵の溜息を満たそうと
期待にふるえる
うつろな空気―
そのうつろな空気をおまえたちは奪ったのだ!
老人たちの
乾ききった瞳を
おまえたちはもう一度押しつぶした
おまえたちが絶望の塩を勝ち取るまで―
この星が担う
あらゆる苦悶の屈曲は
虫たちの暗い地下牢にあるあらゆる苦悩は
集められ山となった―
おお まことの死の刻を奪うおまえたち
最期の息吹そしておやすみのまぶたを奪うおまえたち
これだけは確かだ
おまえたちが投げ捨てたものを
天使は集め、
老人たちの早すぎた真夜中から
最期の呼吸の風が現れ、
この引きちぎられた星を
主の御手へと駆ることだろう!
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ザックスは1970年、癌で亡くなります。
78歳でした。